ノロウイルス等の嘔吐下痢症〜消毒と消毒液の作り方〜

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嘔吐下痢症(感染性胃腸炎)について知りたい方はこちらもどうぞ。
ノロウイルス等の嘔吐下痢症〜嘔吐時のホームケア1〜(脱水補正、経口補水液の作り方など)
ノロウイルス等の嘔吐下痢症〜予防に手洗い・マスク・消毒を〜
ノロウイルス等の嘔吐下痢症〜消毒と消毒液の作り方〜



さて、今回は、家族が嘔吐下痢症(感染性胃腸炎)にかかって、家で吐いたりした時にどうやって消毒するか? というお話です。
嘔吐下痢症(感染性胃腸炎)の原因はノロウイルスとは限りません。
感染力の弱いものである可能性もありますが、ノロウイルスと仮定して消毒しておけば、他の物もほぼカバー出来ると思います。
というわけで、ノロウイルスに対する消毒について説明させてもらいます。

ノロウイルスについてのおおまかな話は厚生労働省のQ&Aがわかりやすいので、そちらもぜひご参照ください。

ノロウイルスは、患者さんの嘔吐物や排泄物の中にうようよ存在しています。
これを不適切に処理してしまうと、手について→口の中に入って感染したりするだけではなく、乾燥したものが空中に舞って、それを吸い込んで飲み込む事で感染を起こす可能性があります。
ですので、吐いたもの、下したもので汚れたものは、とにかく「密閉して捨てる」&「捨てれない物は消毒する」ことが必要になります。
また、その際、看病している人が感染しないように、自分自身の防護も必要になりますので、そちらの説明もしていきます。

ノロウイルス、消毒をする時はまずは防護を忘れずに

これらの処理をしている看病人が感染をしては意味がありません。
また、消毒液として紹介している、次亜塩素酸ナトリウムは人体には使えません。手に触れるとひどい手荒れを起こしますので、消毒液にも直接触れないようにしましょう。



使い捨てのゴム手袋を使用し、万が一口に入ったりしないように、マスクを装着します(マスクはできれば看病をしている間、ずっとつけておくことをお勧めします)。
消毒が終了したら、使い捨てのゴム手袋、マスクも別のビニールに入れて、密閉して捨てます。
マスクも? と思うかもしれませんが、消毒の際に飛び散ったものが付着している可能性が高いので、嘔吐物やオムツを処理した後には新しい物にできるだけ取り替えましょう。

そして手洗いをしっかりします。手袋をしているから必要ないと思わずに洗いましょう。手袋を外す時に、手袋の外側を触った時など、手もやはり汚染されていると考えてください。
詳しい手洗いのやり方についてはこちらに書いてますのでご参照ください。
ノロウイルス等の嘔吐下痢症〜予防に手洗い・マスク・消毒を〜http://halproject01.blogspot.jp/2016/12/blog-post.html

オムツの処理をする時も気をつけましょう。
(ちょっとソースを忘れましたが)便処理の際、6枚重ねでトイレットペーパーを使用しても、手にウイルスが付着するというデータがあったはずです。
できれば手袋着用。できなかった際は、より念入りに手洗いをしてください。
手袋をした場合でも、手洗いは忘れずに!


オムツなどそのまま捨てられる物の処理

一番手軽なのは、汚れたものごと密閉して捨ててしまうことです。
乳幼児のオムツなどが一番よい適応です。

用意するもの

  • 手袋
  • ビニール袋2枚
  • 消毒液(濃いめ、1000ppm)


やり方

  1. 手袋をはめ、汚染されたものをビニール袋に入れる。
  2. 消毒液をひたひたになる程度に入れる。
  3. しっかりと口をしばる。
  4. もう一つビニール袋を開き、手袋(マスクもあれば)、3.のビニール袋を入れ、密封する。


2.の消毒液は、入れる事ができればベストです。
ただ、そこまでできなければ、そのまま二度と開かずに捨てるようにしましょう(開けるとそこからウイルスが舞い散る可能性があります)。


吐物の処理と消毒のやり方(床やトイレなど、次亜塩素酸ナトリウムが使用可能な場所)

準備するもの

  • 使い捨て手袋
  • マスク
  • キッチンペーパーなどペーパータオル
  • ビニール袋2枚
  • 消毒液


やり方

  1. まずは吐いたらすぐに手袋とマスク。吐物の上からペーパータオルをかけ、乾燥して舞い散るのを防ぎます。
  2. 消毒薬を使うので、窓を開けて換気を開始。
  3. 汚れたものを入れるために、ビニール袋を広げて横に置く。
  4. 吐いたものを、ペーパータオルで外側から内側に向かってまとめるようにしながら拭き取り、ビニール袋に入れます。
  5. まだ拭き取れるようであれば、新しいペーパータオルで4.を繰り返します。
  6. できるだけ拭き取った場所にペーパータオル等を敷き、それがしっかり湿る程度消毒液をかけてから拭き取ります。
  7. トイレなどで汚染されていそうな場所(便器内も含む)があれば、そこも消毒液をまくか、しっかり消毒液で湿らせたペーパータオルなどを使い、拭き取ります。
  8. 10分後、しっかり水拭きします。(金属が腐食します)
  9. 使用したペーパータオルは全てビニール袋に捨て、できれば濃いめの消毒液を浸るまで入れてしっかりと密閉します。
  10. もう一つのビニール袋に、使用した手袋とマスク、密閉した8.のビニール袋を入れ、こちらも密封します。


解説など

肝は、とにかくまずきれいに拭き取ることです。
吐いたものなどが残っていると、消毒の効果ががくんと落ちます。できるだけきれいに拭いた上から消毒しないと意味がありません。
1000ppmであれば1分程度でノロウイルスは死滅します。時間をおけるようであれば、10分を越えない程度に放置する方が効果的ですが、その間にそこで子どもが遊んだりしないように注意しましょう。漂白作用があるので注意を。
水拭きをすることで、床や金属などへのダメージを減らすことができます。しっかり拭き取りましょう。
ビニールを2枚用意しておけば、二重に包めますのでウイルスが漏れ出るのをより防げます。
もし、防護用のガウンやエプロンがあれば着用するのがベストですが、こちらも廃棄or消毒が必要になります。必要に応じてご利用ください。
(使い捨ての手袋がベストですが、急な嘔吐などで使い捨てのものがなかった場合は、普通のゴム手袋を使用し、こちらも消毒液をつけて10分放置して消毒しましょう。ただ、汚染されている可能性を考え、汚物や消毒薬を扱う時以外は触れないようにしましょう。)

ちなみに、病院などではこんなキットを使用することもあります。
by カエレバ
 ルビスタなどはよく使われますが、家庭で使用するには高価かと思います。家庭にあるハイターやキッチンペーパーなどを上手に活用してください。


絨毯、シーツなど布類が排泄物で汚染された場合の消毒のやり方

まず、洗うまでに時間がかかる場合は、蓋つきのバケツに入れておく、もしくは大きいゴミ袋に入れておくなどして、乾燥&ウイルスの飛散を防止しておきましょう。
できれば、最低限の汚れだけは除去&予洗いだけ済ませることをおすすめします(この見出しの項目の最後の部分に、予洗いの際の注意事項も書いています)。

こちらも次亜塩素酸ナトリウムに10分浸けおきで消毒できますが、脱色します。
脱色して困る物は、「85℃以上、1分以上」の熱湯もしくは蒸気で消毒可能です。
しかし、実際には熱湯をかけても85℃を1分以上キープすることは難しいです。
そんな場合にはどうしたらいいの……?

というわけで、ここで東京都がいいリーフレットを作ってくれています。
http://www.tokyo-eiken.go.jp/assets/issue/health/webversion/web25images/norovirusdisinfection.pdf

それは、そう、スチームアイロン
スチームアイロンを1カ所2分ほど当てる事で消毒が可能です。
範囲が広い場合は難しいですが、カーペットなどはこれで対応をおすすめします。

布団内部までしみ込んだものなどは、布団乾燥機程度では不十分なので、これは寝具の業者で乾燥機にかけてもらうしかありません……
ですので、布団に関しては、とにかく内部を汚染させないように対策することが肝要になります。

ここでおすすめしたいのが、ペット用のトイレシート。日用品も置いてあるドラッグストアやスーパーなどでも販売されています。
いろんなサイズがあるので、お好みで(香料がないものをお勧めします。小さい方が、取り替える時に経済的ですが、大きい物の方がきれいに敷けます)。
by カエレバ
私が買ったのはこれでした。シングルの寝具の横幅に少し足りないくらいなので、重ねてつなげて使用。周囲の飛び散ると困る部分にはバスタオルやキッチンペーパーを予め敷いておきました。

ペット用では気持ちが悪い……という方は、介護用の防水シーツでも問題ありません。
by カエレバ
こういった類のものです。(あれ、よく見たらほとんど値段変わらないな……。)
嘔吐下痢になったら、とにかく布団の表面をこれらの防水加工のもので覆ってしまいます。
全体が無理であれば、主に頭が来る側周辺を覆います。
小さいものであれば、重ねて漏れないように工夫します(裏をガムテープで固定しても)。
吐いた場合、汚れた部分は丸ごと廃棄処分。少しでも汚れた部分があれば捨てて取り替えます。
布団については汚さない、しみ込ませないのが一番なので、よければストックしておいてみてください。子どもが病気の時に遊びやすい場所などに敷いておくのも便利です。


その他、脱色もしてほしくない、アイロンも難しい、範囲も広い場合は
  • 熱湯を繰り返しかける
  • 複数回洗濯してとにかく洗い流す
  • 乾燥機を併用する

という次善の策があります。ベストではありませんが、ベターです。
洗濯する場合も、とにかく先に手袋をして、バケツ等で排泄物をできるだけ洗い流してください(予洗い)。
そのまま洗濯機に放り込むと、洗濯機自体にウイルスが付着して、他の衣服なども汚染する可能性があります。
そして予洗いに利用したバケツや流しも、できるだけ消毒液で消毒(消毒液をかけて10分放置後水洗い)してください。

ちなみに私自身は、どうしようもないものは予洗い→熱湯を繰り返しかける→複数回洗濯という方法をとりました(衣類用乾燥機はうちにはないので……)。ご参考までに。


消毒液の作り方

ノロウイルスには基本的にアルコールは効果ありません。(少しはあるとしても、手洗い後に念のために使う程度の効果であり、嘔吐したものや下痢の始末の時の消毒には使用できません)
塩素系でいくつか効果があるものがあるのですが……調べた範囲、ノロほにゃららという名称で売られているものでも「濃度が低い・濃度不明」「そもそも薬剤が違う」「pHなどの条件で効きそうにない」など、まともなものもあるとは思うのですが、非常にまちまちで一つ一つ精査することもできませんし、お勧めし難いです。

ですので、間違いなく効果あり、手軽に手に入り、しかも安価! である、次亜塩素酸ナトリウムを私は全力でおすすめすることにいたします。
要するにハイター・ブリーチですね。衣類用でもキッチン用でも構いません。
ただし、ワイドハイターはダメです。成分が違いますので消毒には使用できません。
哺乳瓶消毒に使うミルトンでももちろんOKです。
ハイターなどを使わないけれども消毒液はストックしておきたい場合は、ミルトンが一番おすすめです。(ミルトンは消毒用なので、他の余計な成分が入っていません)
by カエレバ
ベビー用品売り場などに売られています。

使いやすい分量での作り方をご説明します。ご自分で調製したい場合は、備える.jpの記事がわかりやすかったので、200ppm、吐物を浸けおきする物は1000ppmで調製してください。

床や布を消毒する消毒液の作り方(200ppm)

用意するもの

  • 500mmlペットボトル
  • ハイター・キッチンハイター(ワイドハイター不可、成分が違います)もしくはミルトン

作り方

  1. ハイターをペットボトルキャップに1/2杯分(2ml程度)、ペットボトルに入れる。(ミルトンを使用する場合は、ミルトン10ml、ペットボトルキャップ2杯)
  2. ペットボトルが一杯になるまで水を入れる。
  3. ペットボトルの外側に、赤マジックなどで「消毒液200! キケン!」などと書いておく。


吐物等の処理に浸けおきする濃いめの消毒液の作り方(1000ppm)


用意するもの

  • 500mmlペットボトル
  • ハイター・キッチンハイター(ワイドハイター不可、成分が違います)もしくはミルトン

作り方
  1. ハイターを付属のキャップに1/2杯(もしくはペットボトルキャップに2杯、10ml)、ペットボトルに入れる。(ミルトンの場合は50ml、付属キャップ2杯・もしくはペットボトルキャップ10杯)
  2. ペットボトルが一杯になるまで水を入れる。
  3. ペットボトルの外側に、赤マジックなどで「消毒液1000! キケン!」などと書いておく。

注意事項
ペットボトルを使用すると、間違えて飲む場合がありますので、商品のラベルを剥ぎ、必ず目立つように文字を書いておきましょう
目分量過ぎて不安な場合は、少し多めにして調製すれば失敗がありません。(濃い分には問題ありません。CDCは200ppmでなくて1000ppm〜5000ppmとかなり濃い濃度を推奨しています)。
今回、扱いやすい500mlで説明しましたが、もちろん1000ml(1L)以上作っても構いません。
作った消毒液は、できれば毎日作り替えましょう。(光に当たったり、汚れが入ると濃度が低下します。濃いものであれば1週間程度持ち増すが、200ppmなどの薄い溶液では十分な濃度を保てない可能性があります)
もし消毒液の中に汚れが入っている場合は、すぐに作り替えるようにしてください。



追記:ハイターなど次亜塩素酸ナトリウムは時間経過と共に濃度が低下します。ハイター、キッチンハイターは製造時の次亜塩素酸ナトリウム濃度は6%です。しかし、メーカーの花王のホームページでは、200ppm、1000ppmの調整法は約2倍になるように希釈法を紹介しています(200ppm以上、1000ppm以上と記載されています)。恐らく、この濃度低下を考えているのではないかと思います(多分)http://www.kao.com/jp/soudan/topics/topics_083.html
当サイトでも、このページの紹介を踏まえて記載していましたが、一般的な希釈法に準じて記載を変更しました。
消毒については、濃度が低いと効果がありませんので、メーカー記載の調整法の方が無難かもしれません。


嘔吐下痢症(感染性胃腸炎)についての知りたい方はこちらもどうぞ。
ノロウイルス等の嘔吐下痢症〜嘔吐時のホームケア1〜(脱水補正、経口補水液の作り方など)
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ノロウイルス等の嘔吐下痢症〜消毒と消毒液の作り方〜


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参考サイトなど
ppmとは何か?除菌剤の濃度調整や単位換算の方法|備える.jp
http://sonaeru.jp/goods/disinfectant/intro/g-29/

ノロウイルスに関するQ&A |厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html

Norovirus | Preventing Norovirus Infection | CDC
http://www.cdc.gov/norovirus/preventing-infection.html

http://home.hiroshima-u.ac.jp/health/nv.html

‎http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/dl/link01-01_leaf01.pdf

http://www.tokyo-eiken.go.jp/assets/issue/health/webversion/web25images/norovirusdisinfection.pdf

http://www.pref.tottori.lg.jp/secure/833101/25nensoudanjirei1.pdf

(記事は下に続きます)
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