1歳以上の第2期定期接種前の幼児にMRワクチン2回目接種は必要ですか? 麻疹(麻しん・はしか)Q&A

流行していなければ麻疹ワクチン・MRワクチンは定期接種の期間に合わせて接種すれば十分である


まずはこれが基本です。
1歳のMRワクチン(第1期定期接種)で、就学前1年の第2期定期接種までに麻疹を防ぐのに十分な量の麻疹の抗体ができ、2期までの期間はその抗体量も十分あると考えられています。(すいません、文献があったんですけれど見つからず、また見つけたら追記します)
ですので、特に流行地でなければ焦って追加で2回目のMRワクチンを接種する必要はありません。

というのが、公衆衛生的な答えになります。

しかし、あくまでも「個人」に限局した話を下に書きます。2歳、3歳、4歳、5歳頃のお子さんをおもちの方は参考にしてください。

ただし5%程度に麻疹抗体ができない事がある

麻疹のワクチンは比較的抗体ができやすいワクチンです。1回の接種で約95%に抗体ができます。たとえば武田のMRワクチンのデータを見ると、抗体陽転率は99.7%です(326人中325人が抗体が陽性になった)。
非常に優秀な成績と思うんですが、100%ではありません。どうしても個人差があるんです。
このワクチン接種で抗体ができない事を、primary vaccine failureと言います。
5%くらいに抗体ができなくても、次の2期目のMRワクチン接種をすれば、ほぼ100%の人が抗体を獲得できます。集団で考えた場合、他の人がきちんと抗体をもっていれば、麻疹は流行しません(麻疹は約90%の人が抗体をちゃんと持っていれば、流行しません。集団免疫の効果です)。
だから焦って2回目を接種する必要はないんですね。

流行している場合はどう考えるか
これが微妙なところだと思いますし、考え方次第だと思います。
95%は大丈夫だから接種しなくて大丈夫というのも一つの考え方ですし、5%が心配だから接種するというのも一つの考え方です。

たとえば、CDCでは国際旅行をする際は「12ヶ月以上の小児は28日以上あけて、MMRワクチンを2回接種」を推奨しています。要するに、麻疹流行地に旅行する可能性があれば、1歳以上は麻疹のワクチン(アメリカはMRワクチンではなくてMMRワクチンを使います)を2回うて(生ワクチンだから28日以上あける必要あり)、という事です。

日本はどうか。2018年の流行をうけて、国立感染症研究所が出している指針から抜粋すると……

「可能な限り早めの MR ワクチン接種が推奨される者」の中に、
  • 2歳以上第2期定期接種対象期間に至る前の幼児で、麻疹含有ワクチン未接種あるいは接種歴不明者
があります。
また、
1 歳以上第 2 期定期接種対象期間に至る前の幼児で、麻疹含有ワクチン 1 回接種者については、麻疹患者との接触の程度、状況に応じて、緊急避難的な場合に限って検討する。
と書かれています。
合わせて考えると、「1歳でMRワクチンの定期接種を済ませた子どもは、2期までは、麻疹患者と接触したり、流行の最中にいなければ2回目を接種する事は検討しないでよい」という事でしょうか。

結論として、「これが正解」という事は言えません。個人の考え方もあると思います。かかりつけの小児科で相談するのが一番かと思います。
ただ、例えば家族や同じ保育園や幼稚園で麻疹患者さんが出た場合は接種を検討してください(接触後72時間以内に麻疹のワクチンを接種する事で、発症を予防する効果が期待できます)

また、今後の麻疹の流行次第で状況は変わります。
例えば2015年2016年に起きた麻疹排除状態だったモンゴルでの麻疹大流行の際は(9ヶ月と2歳でMMRワクチンの定期接種あり)、生後6か月~5歳のすべての小児と18~30歳の大人(定期接種2回導入以前の世代)対象に全員への接種を行っています。
今後どうなるかわかりません。今後の動向を見てもらいたいと思います。

追記:2回目の接種を早める事による不利益(例えば抗体ができにくいとか、副反応が起きやすいとか)については随分探したのですが、そのようなデータは見つかりませんでした。ちなみにアメリカでは12〜15ヶ月で1回目、4〜6歳で2回目のMMRワクチンを接種します。上記の様にモンゴルではもっと早く接種しているようなので、その点は心配いらないのではないかと考えています。

参考サイトなど

MRワクチン接種の考え方 国立感染症研究所


Measles | For Travelers | CDC

モンゴル国における2015~2016年の麻疹の大流行 国立感染症研究所


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麻疹(麻しん・はしか)情報まとめ(当ブログ内)

(記事は下に続きます)
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